時空論典。

遂に!やっと!どっこらしょっと!新型デュラエースが発売されましたね!


「ってオマエは無沙汰の詫びも無しでいきなり何だ?」という話ですが出たらしいんですよ!ヒバゴンが!

じゃなくて新型デュラエースが。ついでに新型アルテグラも。

めでたくて寿ぎたくて会いたくて震える、そんな人が多く居られる陰で、「遂に」と黙祷捧げるワタクシ。

そう、発表されている限り「機械式変速」のラインナップは無く「電動変速のみ」となっていたのです。

より快適により高性能にと願う限り正常進化と喜ぶべきなのでしょうが、個人的には・・・呆然としちゃうなぁ、なんて。



というのもワタクシにとって自転車は「今の一瞬」を共にする対象では無く、「いつでも乗れる」事こそが重要。

というかいつでもパッと乗れるからこそ自転車は尊いと勝手に思うておる訳です。

充電せんとならん!とか、出先でバッテリーが〜!とかそういうのは仕方ないと言うかどうでも良いというか、まぁそんなモンじゃん?

しかし仮に今新型デュラを導入したとして、10年後に動くかというと・・・無理っぽい気がするんですよね。



先日、ある修理御依頼を頂きました。

オッサンなら一度は憧れたライトスピード、しかもソフトテールってのが実に渋い。

しかし、そのソフトテールの心臓部たるリアサスペンションユニットが死んでいる、と持ち込まれた今回。

当時はベタ中のベタだったRockshoxのSID、しかし気がつけばもう20年も前の製品です。

廃盤後も暫くは純正補修部品の供給が行われますが、ロックショックスは廃盤後3年間とかそんなだったはず。

なので20年前の補修部品なんてある訳も無く、え〜・・・どうしましょ?となる訳だ。


「今のユニットを直せないなら、ユニット丸ごと差し替えれば良いじゃない」というマリー・アントワネット方式の採用が望まれるも、

画像でもお分かり頂ける通りソフトテール用って通常品と形状が違うので、「じゃぁ代わりにコレ」とは行きません。


という事で選択肢は以下。

1、限りなく良好な状態の互換ユニットを探して来て差し替える⇒時代を考えろ。

2、意地でも直す⇒念で直せるサイキッカーの時代を待て。

3、諦めて床の間に飾る⇒そんな馬鹿な!動かない自転車なんて自転車じゃねぇ!

4、丸ごと捨ててまえ⇒え・・・えっ?


アナタならどうする?




ゾッとしませんか?ワタクシはゾッとします。

リアユニットの不具合さえなければ己が人生の火が尽きるまで乗れそうな銘品が、

補機の補修部品がないという理由でゴミになるなんて。そして自分ではどうしようも無いなんて。

「自転車なんか10年も乗りゃぁ上等じゃねぇか、寿命だ寿命」

そう切って捨てられる人も居られるでしょうし、何なら多数を占めるのかもしれません。


しかしワタクシは何年・何十年放置していようが、ふと「乗るか」と思い立てば乗れる自転車にこそ神通力が宿ると考える故に、

賞味期限がたかだか10年程度の自転車なんてなぁ・・・ん〜。


勿論、愛人との火遊びの様に今一瞬を楽しむ自転車があっても良いと思います。

でも、それは本妻や日常の生活あっての火遊びな訳で、火遊びを全面的に受け入れられるほど虚無的にはなれんです。



そんなこんなな己の価値観というモノがある訳ですが、新型デュラとアルテが電動化一本で行くという事は、

己が時代からやんわりと別れを告げられているに等しい、と感じ入らずには居れないんですな、コレが。

因みに此方の画像はSunrisecyclesが建造中のソフトテールバイク。

リアサスペンションユニットは既存のモノを使うのではなく、汎用エラストマーを用いる予定なので、

絶対性能で言えば旧世代の其れですが、少なくとも10年20年程度で「アウト!」となる懸念は無い。



そう、世の大勢がどうであろうと「気に入るモノが無ければ作る」という逃げ場が残っているのです。

付け合わせる部品も今持っているモノや世の中に出回っているモノを、

どついたり伸ばしたり捻ったり擦ったりすれば死ぬまでなんとかなるだろうし。

まぁそんなこんなで自転車物販業をギブアップしたワタクシですが、それも自然な流れなんだろうな、と自己弁護しつつ、

お上の恩寵を受けれないならそれはそれと、隠田の様な自己完結自転車生活を広げる活動を初めて早一年。


この「自転車生活共闘組合シクロンデン」なる活動が何処まで続くのか?何かしらの結果を生む事があるのか?

未だに全く掴めませんがまぁ何なとなるでしょう、うん。




で、件のライスピのソフトテールはどうなったか?

直しましたよ、意地で。

言ってませんでしたっけ?念力使えるって。

空井戸サイクル

「自転車に恋をして」 日々横を通り過ぎるママチャリでなく、恐る恐る触れる超高級車でもなく、跨り漕ぐ度にときめく自分の愛車。それを見つける旅の水先案内人が自転車屋です。そしてその恋がズッと続くお手伝いを今日も明日も明後日もしていたかったのですが令和二年をもって廃業し現在地下潜伏中。