瞬間。

レースが真剣勝負だとすれば、「バイクロア」はレースと運動会の中間に位置するチャンバラ的イベント。

こういったイベントは自然豊かな田舎の公園などで行われるのが普通ですが、

今回は大阪市内のど真ん中・大阪駅の横で行われるという事で興味が湧き見に行ってきた昨日。


現場に足を踏み入れると状況は想像を想像を超えるというか・・・本当にビルの谷間でレースやってんですよ。

少し前まで木下大サーカスの会場だった場所ですから起伏など無い真っ平らな更地、

そこに立体感を加える為に用意されたのは「まさかの」的な奴。


こんな場所&こんな車を「よう借りれたな」と呆気にとられつつ会場の中に広がる様々なブースをうろつくと、

弊店がいつもお世話になっている工具メーカー「Runwell」さんのブースを発見。

そこには定番の工具に加え見慣れぬモノが。

使わないダボを埋める化粧ボルトですが、この意味の無さにかなりグッと来くるのは私だけでしょうか?

工具の掛かりが無ければローレットさえも無いので締め付けは手の力に頼るのみであるとか、

キャリア用ダボなどの横方向穴につけると、不意の衝撃でボルト折れ込み状態に陥る可能性があるなど、

製品としての完成度はけっして高いとは言えないのに・・・欲しくなる。

「試しに作ってみた」との事だったので、とりあえず商品化熱望コールを送っときました。



レース自体は15分/レース程度の短いモノなので、色々なカテゴリーが立ち代わり入れ替わり淡々と進行。

PD(pro-driver)として参加した私は特にする事も無いので、持って来たボンボンベッドに寝転び、

本をノンビリ読む・・・はずが眩しい日差しに遮られ中々読み進められんです。

しかしこういった場に来るという事は大体が同好の士でありますし、ましてや狭い自転車の世界。

昨日会った顔から10年振りに会う顔まで色々な人と「おっ!」とか言いながら肩叩き合い、

子供の事、白髪と腹の事、業界の今と未来の事など、どうでも良いような良くないような事を語り合っている内に、

日差しが翳ってパラっパラっと天気予報通りの雨がやって来て。



しぐれ以上、小雨以下の波が続く中、固定ギアを用いたクリテリウムの時間に。

狭く仕切られたコースなのでただでさえスリリングなのに、水溜りの中を走るとなると・・・見ている方がビビるです。

しかしコンパクトに纏めた場ながらもエキサイティングなレースが続々展開され、

走る人だけでなく見ている人も、いや見ている方が楽しめるイベントとは正にコレってなモンで。



基本、他所の街に行くのが邪魔臭いと感じる地方出不精(≠デブ症)の私ですが、何となく「行って良かった」と思いました。

今回の会場はこの後すぐにアスファルトが剥がされ、大きな建物が公園を作る工事が始まるそうなので、

同じ場所で同じ光景を見ることは二度と叶いません。

故にこの日見た光景は記憶の中にのみ残り、ある種の空想やメルヘンの世界に転じて行くしかないのです。


その事にどんな価値あるかは知りませんけど、少なくとも無価値ではなく人生の良い栄養になりますよ、きっと。


空井戸サイクル

「自転車に恋をして」 日々横を通り過ぎるママチャリでなく、恐る恐る触れる超高級車でもなく、跨り漕ぐ度にときめく自分の愛車。それを見つける旅の水先案内人が自転車屋です。そしてその恋がズッと続くお手伝いを今日も明日も明後日もしていたかったのですが令和二年をもって廃業し現在地下潜伏中。