想念。

閉店(公式)からの約2週間、時間の流れが随分変わりました。

コロナ休校中につき行く宛の無い息子と一緒に出勤して店先ピクニックをしたり、

今まではあまり行けなかった配達や引き上げに出掛けたりと中々に新鮮な毎日。

が、やってる事の根本は変わる訳も無く只管作業。

ホイルがクシャって移動不能となった車両を引き上げて来てホイル組み替えとか。

まだまだリム減りの無い良いリムなのに・・・こんだけメビウスってしまうと完全に産廃なので悲しい。



ホイル繋がりで次。

「中学生の通学マシーンにハブダイナモを!」との指示をうけ用意したるは格安ハブダイナモ「ヒルモ/C-2100」

出力を一般的なハブダイナモの3分の1程度である0.9wに抑える事で、持って軽く転がして軽いのにお値段たったの¥3,650!

安っすいよな〜と触る度に感心しますが、製品の箱を開けると何やら油染みの様なモノ。

ウエスで拭くと・・・うん、思っきり油性マジックで傷隠してますね。

異国の工場で「ヤバイヨ、メチャ傷入ッタ、ペナルティ喰ラウヨ、マッキーデ塗ットケ」と隠蔽工作が行われたのか?

そんな事を想像すると傷隠しにもまた言外の手紙の如き風情が感じられて好ましかったり。


個人的付き合いがある、といえないお客様に納めるモノであれば「アウト!」となりましょうが、

閉店後の残務で作業させて頂いている方は基本的に皆様お馴染み様ばかりですし、

今回のハブダイナモの御依頼主様もマジック傷を笑って頂ける方なのでスルーパス。



車両変わって此方は国内最大の某ネットオークションで手に入れたフレームを組むべし、という御指示。

フレームと共に持ち込まれた中古部品の検品から始める訳ですが「状態良好なれど規格が少し違う」とかもあり、

車両のBBシェルが68mmなのに対し、持ち込まれたBBは73mm。

「コレは違います、規格に適合したBBでキッチリ組みましょう」というアドバイスと、

「左右に間座噛ませたら同じ事ですから有るモノ使いましょう」というアドバイス、

このオーナー様ならドチラを好むだろうか?などと考えるまでもなく間座入れてクリア。


シートポストは?無い?そうですか。

え〜、ポスト径はΦ31.6mmかな・・・と31.6を刺してみるもガッバガバ。

その瞬間、背筋に冷たいモノが流れました。

コレは!Φ32.4mmやないか〜いっ!

恐らくサイクリスト100人いれば99人までが耳にした事さえ無いであろうΦ32.4mmというマイナー規格。

現在手に入る適合製品は・・・無くは無いけど似合わんかったり値段が高か過ぎたりで。


ん〜、どうすっぺかねぇ?てな悩みをブチ破ってくれるのが此方の小物。USEのポストシム(¥1,600)です。

今回は手元にあった一番安価なポストがΦ31.6mmだったので「32.4⇒31.9」というシムをゲット。

厚み0.25mmというペランペランの製品ゆえに単品で持つと少々心許ないですが、セットするとホラ!ピッタンコ!



さぁドンドンやっつけてくど!次の奴、カモンカモン!

分厚い耳が素敵な1x1のオーバーホール。

お買い上げ頂いたのは15年ほど前になりましょうか?その15年の間に何度メンテをしたかと想い返すと・・・限りなくゼロ。


まぁシングルですからね、傷む箇所も少ないので楽勝楽勝。

何はなくとも解体&清掃する所からスタート。オーナーが溜め込んだ汚れを黙々と落として行きます。

ん〜・・・減ってますねぇ・・・。

快音とタフネスで知られるホワイトインダストリーズのENOフリーと言えども摩耗には勝てんか。

と知りつつもリビルドせずには居れない貧乏性のワタクシ。

オーナーはどう考えるだろうか?コイツの話に限れば「交換」なんだろうけど、

他にもまだ色々出て来そうだからまずはネガ点を洗い出して優先順位つけてから相談っすね。



まぁそんなこんなをはじめとして只管作業だけに明け暮れる此処暫く。

起きている時間の殆ど、誰かの事を考えています。

「祈る=対象の為に時間を割く」と定義しているというお話を先日しましたが、

その意味において作業は完全に祈りですし、手を動かす事を生業と出来るのはワタクシにとって信教にも等しい。


実際問題、店を普通に営業しながらでは到底時間が足りないので没頭できる閉店後の今は結構幸せです。

空井戸サイクル

「自転車に恋をして」 日々横を通り過ぎるママチャリでなく、恐る恐る触れる超高級車でもなく、跨り漕ぐ度にときめく自分の愛車。それを見つける旅の水先案内人が自転車屋です。そしてその恋がズッと続くお手伝いを今日も明日も明後日もしていたかったのですが令和二年をもって廃業し現在地下潜伏中。