愛憎Mine。

昨年から矢継ぎ早に投入されたSurlyの新ラインナップですが、さぁ此処で問題です!何種類増えたでしょうか!

答えは・・・というクイズが成立するくらい一気に増えたSurlyの新車種。


正直ワタクシの頭の中でも纏め切れていないので、改めて整理してみましょう。

まずは年末に追加された「Packrat/パックラット」

「クロスチェックの650Bホイル版」という所が企画のスタートであった事は疑う余地もありませんが、

普通に650B化するだけではパンチ欠けると考えたのか「フロントラック装着前提」というキャラで昨年末に登場。

フロントラックに重量物を積んだ際にもハンドリングバランスが崩れないよう配慮した設計との事で、

少し立ち気味のヘッドが醸す独特のシルエットが、やはり独特のハンドリングを想像させます。


「それってラック無しで乗る人には都合悪くないの?」と言われて「一寸も問題無し!」と答えると矛盾が出ますから、

よりニュートラルな製品として直球のCC650B版を作った方が良かったのでは?ってのは誰でも思う所。

故に「フロントラック」と抱き合わせで新型フレームを提案して来たのは安易なゴリ推しではなく、

此処から将来定番となる一つのスタイルを作ろう、というチャレンジングな意思の現れではないかと想像する訳です。

単なる想像ですけどね、想像想像。




次、「Midnightspecial/ミッドナイトスペシャル」。略して「おスペ」。


おスペはグラベルだー、いやアドベンチャーだー、いやいやディスクロードだー、といったカテゴライズには意味も意義も無く、

「色々出来る事が増えたマルチパーパスオンロードバイクだよ!あとは乗り手次第!」といった今時な存在です。

そんな曖昧模糊とした中でピカーンと光り此奴を此奴足らしめているポイントは、

「今時なスルーを基本としつつ旧来のクイックにも対応している前後エンド」ではないでしょうか。

野生動物で言えば蹴爪の有無で種別が変わるみたいなのと同じく、此奴の独自性はこのエンドに集約されるかと。


考え方としては逆ナカガワッシャ的な話になりますので、スルーアクスル化のメリットの数%は失いましょう。

しかしそんな些細な事は無視!ホイル選ぶ時に使える規格幅が広ければ広いほど楽ですし、

そういった可能性を優先する所がSurlyって感じですよね。


ただスルーアクスル化による高性能化を求めないのであれば、よりシンプルで完成度の高い「ストラグラー」がある訳で、

おスペには旧来のSurly支持者層以外の新支持層開拓という任務が課されている様に見受けられます。




続いて出て来たのは27.5インチホイルのMTB系ツーリングバイク「Bridgeclub/ブリッジクラブ」

プラス規格ではなく敢えて常識的な27.5x2.4タイヤを装備し、スルーアクスル全盛の中にあって敢えて前後QRハブ専用の固定エンド、
そしてテーパーヘッド全盛の今に敢えてOSヘッド&ストレートコラム。


コレだ!コレだよお父つぁん!

特別目を惹く特徴こそ無いとしても、普通に乗れて大体何でも出来そうな感じ!

この地味さ加減こそワタクシがSuurlyに求めておるモノじゃ!ハラショー!オーチンハラショー!


使っていないパーツを入れた「お道具箱」の中にコレ一台組める位は部品ありまっせ、チョッと一台組んでみましょうかね?

手持ちの部品を活かせるって最高だね〜、と浮かれながらスペックノートをよく読むと・・・。

え?リアエンド141mm?

旧来の135mmQRではなく、通常のスルーアクスルでもなく、QRでBoostを再現した「QR-Boost(仮称)」でした。

Boost=スルーアクスルというのはフレームの精度を出すのに手間がかかる為にコストが嵩みます。

ブーストのメリット欲しいよね〜でも予算無いよね〜、という事で生まれた策が「ブーストのQR化」でして、

製造コストを殆ど上げる事無くブーストが生むメリットの多くを享受出来るというのが美味しい方の話、

反対に不味い方の話は・・・そもそも完成車の為に生まれた特別規格なのでハブの入手性が非常に悪い、という点。


ん〜っ!此処が135mmなら個人的に最高だったのでしたが、時代の流れはそれを許さなんだ模様。

☆訂正!本車両は141mmと135mmを兼用化させた「138mm版Gnot-boost」でした!つまり素晴らしい、という事。

各社141mmのQR-Boost規格採用車両は増えているので、今後ハブ単品売の選択肢も増えて行くか?どうか?

素性が良さそうなだけにハブに気兼ねする事無くガシガシ乗れるくらいまでは選択肢増えて欲しいですね!



「ハブの選択肢?ああ、それもう心配ないから」

ドンと胸を叩いて包容してくれるのがSurlyが売り出し中の新エンドシステム「Gnot-boost」

12mmスル−アクスルを用いた145mm幅エンドという事で、少し狭めて142mm&少し広げて148mmと、

MTBリアハブの主導権を争う二規格を両方呑み込んでしまう豪快なシステムです。

「もっと言えば旧来の135mmQRも使えちゃうんですよ!」と謳われておりますが、

135mmQRハブに間座(専用ワッシャ)を噛まして仮想142mm化して使う、という前提がありますので、

ホイルの固定力・剛性感・何よりホイル着脱のし易さで普通の135mmエンドには敵いません。

なので「135mmハブ対応」というよりかは「使える様にしておいたよ!」みたいな一歩引いた感じでしょうかね?



そんなノットブーストエンドを手に入れた「1x1の後継機」とも言われるのが此方の「Lowside/ロウサイド」

弊店が愛する「26+」規格に対応したフルリジッドエクストリーマーといった所で、

シルエットこそ1x1に似ていますが、狙いというかキャラというかは初代インスティゲーターに近い様な。

ただこの「タフガイ」を地で行く様なフルリジッド&前後スルーアクスルという存在は、

決して多くの人に必要とされる事無く、一部の好事家にのみ溺愛されるタイプでしょうから、

そういった意味においては同じく一部の好事家に溺愛された1x1の後継なのかもしれません。



と、この様にSurlyのブランニューマシーンを順に並べてみましたが、

一気にリリースされた4車種(正しくはフルモデルチェンジのパグ入れて5車種)、

其々がある種の「らしく無さ」を含んでいる様に思いますが如何でしょう?


シンプルな自転車の楽しみを追求して生まれたSurlyというブランドが誕生して約20年、

この20年の中でも特に後半10年の規格変遷の早さは予想し得なかったレベルで、

翻弄される我々ユーザー以上に、車両を打ち出すSurlyは翻弄され悩まざるを得なかった抜っただろうと思います。

正直な所、いつまでも同じSurlyで居て欲しいという甘ったるい感情はありますが、

新規格台頭に伴い順に消え行く旧規格を頑なに採用しても未来はありません。

今普通に使っているOSアヘッドも嘗ては新規格であった様に、新規格の恩恵というのは確かにありますしね。


今はとにかく規格が乱立し整理整頓が難しい大荒れ状態ですが、その中でSurlyがどの様な方向にカジを切ろうとしているのか?

その方向性がブランニューマシーン達から透けて見えないかと目を凝らす・・・そんな2018年前半なのです。



今回は一部チョッと嫌な表現をした箇所もあります。

その事で気を悪くされた方が居られたならスイマセン、弊店のことなど忘れてしまって下さい。

空井戸サイクル

「自転車に恋をして」 日々横を通り過ぎるママチャリでなく、恐る恐る触れる超高級車でもなく、跨り漕ぐ度にときめく自分の愛車。それを見つける旅の水先案内人が自転車屋です。そしてその恋がズッと続くお手伝いを今日も明日も明後日もしていたかったのですが令和二年をもって廃業し現在地下潜伏中。