邪言−壱。

前略、この様なモノが出来上がりました。

シャツと呼ぶべきかジャケットと呼ぶべきか微妙な所ですが、まぁ要するに羽織物。

襟や肩周りを見て「アレだろ?」とお気づきになられる方も居られるでしょう、そう此奴は831デニムシャツの兄弟分。


定番のインディゴデニムも良いんですけどね、個人的にヒッコリーが好きなんです。

インディゴほどイメージが一本槍では無いし、着込んだ時の表情の変化も極端じゃないし、

元々労働着用の柄ですから汚れが目立たないしで、何と言うか・・・良くも悪くも主張しない所が好き。


ただヒッコリーでシャツやジャケットを作るとどうしてもワークテイストが強めになる所、

ズラッと並ぶ事が普通のポケットを無くして(というか隠して)ツルンとした外観にする事で、

ワーク系でも小奇麗系でもない、やはりプラスマイナスゼロな超シンプルな一着に。

ボタンも金属製のタックボタンには行かず、ちょいとデカ目のウッドボタンをポンポンポン。

素材はただのヒッコリーデニム、ではなくヘンプ55%コットン45%混紡のスペシャルヒッコリーデニム。

ガシッとした厚みと程よい粗さ、この拡大画像見ただけで「おぉ〜・・・」となる方も居られるのでは?


分厚いデニムシャツって湿気を吸うと肌にベタつく事があると思いますが、麻を主材とした此方はそれが無いので毎日来ても快適。

着始めの数日間こそ少しチクチクしますが暫く着込めば繊維が馴染んで、暑からず寒からずの実に良い塩梅の着心地に。



と、「良い素材使ってシンプルに作りました」みたいなのは服屋さんの仕事であります。

そこに自転車屋のオッサンの妄想エキスを投入すると・・・こういう事になります。

バックポケット付き。しかしサイクルアパレルで一般的な腰部のポケットではありません。

コレはハンティングベストに着想を得たモノ。

ハンターが鳥獣をズドンと仕留めた後、持つの邪魔臭いのと防寒とを兼ねて背面ポケットに入れる為のギミックですが、

日常的に鳥獣を仕留める事は無いのでフラップ付の大口ポケットではなく、サイドエントリーのトンネルポケットに。



例えば今朝とか小雨がパラパラしてたんですけど、そういう時にヤッケを着て家を出たとします。

で、雨が上がる&気温も上がるとなった時に脱ぎますよね。その脱いだヤッケどうします?

手で持つなんて邪魔過ぎるし、バッグに仕舞うのが正しい答えなんでしょうがバッグを常時持つのもやはり邪魔臭い。

そういう時に「取り敢えず押し込んでおけるエクストラスペース」ってのがある方が絶対に良いと思う訳です。

ハンドル買いに行った帰りにもバックポケットにズボッ!

他人から見れば阿呆みたいかもしれませんけど、他人の目を気にしてばかりでは早死します。

腰部分に同様ポケットをつけても機能的には然程変わらない、というか寧ろ出し入れのし易さは遥かに向上するでしょう。

しかし腰部にモノを詰めるとセムシ男みたいなシルエットになって美しゅうないですし、

腰部にステッチ入れるとスコッとしたシンプルな印象が薄れるし。

何より「自転車だからバックポケット」みたいなイージーな所に話を落としたくないというのもありで。

あと寒い時期にコレが無いと困る!と思うモノの代表格である「ハンドウォーマポケット」は、

側面の縫い目に沿って一見しただけでは分からぬ様に仕込んであります。

生地の合せ目からチラリと見える真鍮の引き手でジッパを開ければ普通にポケット。

学生なら生活指導の先生から「手を出せ!」と怒られるところですが、オッサンは寒がりだし手の行き場がないと困るしで特別許可。



手を突っ込んだ際の行き先であるポケット袋は内ポケットを兼ねており、A4サイズの書類が楽々収納可能。

ワタクシなどはレターパックを出しに行く時に重宝しておりますし、エロ本を家族に見つからない様に持ち帰る時にも役立つはず。

あとスマホとかを入れてもそうそう落ちないので、和装における袖の下みたいに適当に放り込むというのもあり。



サイズ感としては日本平均SMLよりも0.2程大きめの831デニムに準じておりますが身幅は僅かにワイド気味。

Tシャツの上に羽織るという着方だけでなく、このヒッコリーをアウターとしてインナーにフーディーなどを着るのも想定しての事。


仕様想定を定めてピンポイントで撃ち抜く方がオシャレになる、これ当然。

しかし「何用」とか「こう着る」とかそういうの要らんです、そもそもワタクシは自転車屋ですし。

求めるのはもっと雑な服との関係。取り敢えずコレ一枚あったらなんとかなるか、みたいな。


ついでに言えばワークっぽいとかライダースっぽいとかアメカジっぽいとか、そういうポイポイな仕分けもご勘弁。

どのジャンルとも距離を置いたただのシャツです、好きな様に作っただけのただのシャツ、それが一番。

ルーズながら何となしに美しく、普段着にも作業着にも着れていつまで経っても小汚い印象にならない。

コレでサイクリングに行けば暑くて不快でしょう、コレでバイクツーリングに行けば寒さで凍えるでしょう。

でも良いじゃない、それもまた良い思い出になるだろうしってなモンで。

空井戸x831 Jargon−Hickory−JKT  ¥21,300(税別)

「Jargon/ジャーゴン」話していることが支離滅裂で意味不明な状態。転じて理解しうる者同士のみ通じる符牒の意。


久しぶりにフルスイングで振り切った感があるモノの、最大20着を予定していた所が生地が足りずに10着のみとなってまいました。

同じ生地はもう手にはいらないので別の生地で作るか?となっても、一度この生地見てしまうとねぇ・・・。

極厚のメルトンとかならやってみたいけど、それはそれでまた練り込みたい事もあるし生地探しから、か。



と、突如始まったジャーゴンシリーズ。

いや、妄想自体は十年単位でやってんですけどやっと一つ形になったというのが今回。

続いてジャーゴンバッグが来るか?どうか?もう数年打ち合わせしてるんで、まぁいつか出来るかな?って感じで明日は定休日です。


空井戸サイクル

「自転車に恋をして」 日々横を通り過ぎるママチャリでなく、恐る恐る触れる超高級車でもなく、跨り漕ぐ度にときめく自分の愛車。それを見つける旅の水先案内人が自転車屋です。そしてその恋がズッと続くお手伝いを今日も明日も明後日もしていたかったのですが令和二年をもって廃業し現在地下潜伏中。